介護業界関連コラム
更新日:
介護テクノロジー導入の前に知っておくべきこと ~其の1~
Wi-FiとGHzの正体:介護現場が誤解しがちな“電波の基礎”とは
介護現場でセンサーマット、インカム、タブレット記録などのテクノロジー機器を導入する際、必ず話題に上がるのが「Wi-Fi環境」です。しかし、多くの介護事業者が誤解しているのが、Wi-Fiの仕組みそのものです。
「2.4GHzと5GHzって何が違うの?」
「電波って医療機器に影響しないの?」
「強い電波の方が良いんでしょ?」
こうした疑問は、実は介護現場で頻繁に聞かれます。
テクノロジー導入を成功させるためには、まず“電波の基礎”を正しく理解することが欠かせません。
1.Wi-Fiは“電波”であり、GHzはその周波数帯を示す
Wi-Fiは、目に見えない「電波」を使って通信しています。
その電波の種類を表すのが GHz(ギガヘルツ) です。
● 2.4GHz帯
・壁を通りやすく、遠くまで届く
・ただし電子レンジなどと干渉しやすい
・速度はやや遅め
● 5GHz帯
・高速で安定
・壁に弱く、距離が伸びにくい
・近距離での通信に向く
介護施設では、居室・廊下・食堂など広い範囲をカバーする必要があるため、2.4GHzと5GHzを併用する設計が一般的です。
2.医療機器への影響は?ペースメーカーは大丈夫?
「Wi-Fiはマイクロ波だから、ペースメーカーに影響するのでは?」という質問は非常に多いですが、結論は次の通りです。
● Wi-Fiは医療機器に影響しない周波数帯として“認可”されている
Wi-Fiで使われる周波数帯は、国が「医療機器に影響を与えない」と認めた帯域です。
そのため、ペースメーカー等に対して基本的に問題はありません。
ただし、利用者本人が不安を感じるケースもあるため、説明の際は丁寧な配慮が必要です。
3.電波は“強ければ良い”わけではない
介護現場でよくある誤解が、「電波は強ければ強いほど良い」という考え方です。実はこれは半分正しく、半分間違っています。
● 強すぎる電波が複数方向から同時に届くと、機器が迷う
アクセスポイント(AP)を近距離に複数設置すると、機器が「どちらにつなぐべきか」判断できず、通信が不安定になります。
● 機器の真横にAP(アクセスポイント)を置くのもNG
APは“少し離れた場所に電波を飛ばす”設計のため、真横に置くと逆に通信が安定しないことがあります。
● 適切な距離と配置が重要
一般的には 1m以上離すのが望ましいとされています。
4.電波強度(dBm)を理解すると、トラブルに強くなる
Wi-Fiの電波強度は dBm(デシベルミリワット) という単位で表されます。
デシベルは「比率」を示す単位で、電波は非常に小さなエネルギーのため、マイナス表記になるのが特徴です。理論上は 0dBmが最も強い電波ですが、Wi-Fi機器が0dBmを出すことはほぼありません。(法律上の出力制限があるため)
介護施設での実務では、次のように理解すると便利です。
・−50〜−65dBm:強くて安定(センサー・インカムも安心)
・−70〜−80dBm:ギリギリ使える(遅延や途切れが出やすい)
・−80dBm以下:ほぼ使えない(センサーが反応しないことも)
センサーマットや見守り機器のメーカーは、「−65dBm以上の環境を推奨」していることが多く、これを満たさないと誤作動や遅延が発生します。
5.介護テクノロジー導入の第一歩は“電波の理解”から
介護現場でテクノロジーを活用するためには、「Wi-Fiがつながるかどうか」ではなく、“どのように電波が届いているか”を理解することが重要です。
・2.4GHzと5GHzの違い
・電波強度の基準
・電波の適切な距離
・AP(アクセスポイント)の配置の考え方
これらを押さえるだけで、テクノロジー導入の成功率は大きく上がります。
次回のコラムでは、介護施設のWi-Fi環境の“心臓”であるアクセスポイントの重要性について解説します。
この記事の執筆者
佐藤 慎也
介護経営コンサルタント
◆プロフィール
組織の仕組みづくりや人材教育などを得意分野とし、介護保険法はもちろんサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどの制度に精通。
介護経営コンサルタントとして、今までに50法人以上のコンサルティング実績を持ち、自らも介護事業の運営に携わっていたため、経営者からスタッフまで、それぞれの立場にあった指導・提案をすることで圧倒的な支持を得ている。
介護業界の動向を解説したメルマガの発行やコラムの執筆を行いながら、全国各地にて経営者・管理者向けのセミナーやスタッフを対象にした研修まで幅広い分野で年間100本以上の講演を行う。
最新の介護業界情報を知りたい方はwellsメルマガへご登録ください
メルマガ登録はコチラ