介護処遇改善加算コラム
目次
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介護職員等処遇改善加算の良くある質問についてご回答
令和6年6月から一本化される介護職員等処遇改善加算。セミナーを行った際に事業者さんから頂いた良くある質問2点についてご回答致します。
令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップを実施する必要はない
今回の処遇改善加算の資料には『介護現場で働く方々にとって令和6年度に2.5%令和7年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう』という文章が記載されております。こちらの文章を真に受けると、事業所としてベースアップを実施しなければいけないと思ってしまうかもしれませんが、こちらについては国から事業所さんへのお願いであって、必ずしも実施する必要はありません。
3/15に発出されております「介護職員等処遇改善加算等に関するQ&A(第1版)」問1―1 0にも同様の内容が書かれております。
問1―1 0 「令和6年度に 2.5 %、令和7年度に 2.0 %のベースアップ」は処遇改善加算の算定要件ではなく、各介護サービス事業所・施設等で目指すべき目標ということか。
(答)
・貴見のとおり 、 今般の報酬改定による加算措置の活用や、賃上げ促進税制の活用を組み合わせることにより、令和6年度に+ 2.5% 、令和7年度に+ 2.0% のベースアップを実現いただきたい。
と回答されているため必ずしも実施する必要はありませんし、令和7年度に処遇改善加算の加算率がアップするお話はありませんので配分をよく考える必要があります。
キャリアパス要件Ⅳの年収440万円以上の対象を作れない「小規模事業所等で加算額全体が少額である場合」などの合理的な理由の基準はない
旧3加算の特定処遇改善加算の際にも要件の1つにあった年収440万円以上の職員を1人以上つくることですが、合理的な理由がある場合は免除される仕組みとなっております。ただし、この免除される具体的な基準(数字的根拠)がなかったりします。
厚生労働省が発出している資料には
・ 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
・ 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合と書かれておりますがこれだけだと自事業所が果たして当てはまるのかどうかわからないというご質問を良く頂きました。
私の回答としては、事業規模や加算額予定、加算率(サービス種別)がわからないのでなんとも言えませんがという事を前提に、例えば平均年収400万円、人数10名、加算予定額300万円とかなら440万円以上の設定できると思いませんか?これが平均年収350万円、人数10名、加算予定額300万円とかだと厳しそうだとなりませんか?ということで、この辺が合理的な説明できるかどうかってことになりますので、基準はないですが、人に説明する際に納得感があるかどうかが合理的な理由になると思っております。
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介護職員等処遇改善加算の配分の基本的な考え方
令和6年6月から一本化される介護職員等処遇改善加算。今回は改めて処遇改善加算の配分の基本的な考え方をお伝えしたいと思います。
処遇改善加算が1本化されたことによって旧3加算のなかで一番ややこしかったグループごとの配分ルールが撤廃されました。そして新加算(Ⅳ)の1/2以上を月額賃金で配分することという新たなルールが追加されました。この新ルール(月額賃金要件Ⅰ)は処遇改善加算を一時金や賞与に使うのではなく可能な限り月額賃金に回してもらいたいという国の考えが色濃く反映されたものです。
基本的な配分パターンは5種類
- 基本給の引上分(交付金時代からの昇給分含む)
月額賃金要件Ⅰに該当 - 処遇改善加算手当等(毎月支払う手当)
月額賃金要件Ⅰに該当 - 一時金・賞与
- 法定福利費
- その他手当 例:年末年始手当等
処遇改善加算の基本的な配分パターンは上記5種類となります。法人さん、事業所さんによっては様々な形で配分をしていると思いますが、それぞれの手当や払い方がどの番号に入るかを考えていただくとわかりやすいかと思います。
令和7年度以降は月額賃金要件Ⅰを満たす必要がありますので全体総額を把握した上で配分要件をクリアするかを見ておくと良いです。下記の表などを参照にご検討頂ければと思います。
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介護職員等処遇改善加算の令和6年度配分ポイントについて
令和6年6月から一本化される介護職員等処遇改善加算。すでに計画書の提出期限(4/15)は過ぎておりますが、改めて令和6年度の配分ポイントをお伝えしたいと思います。
介護職員等処遇改善加算(新加算)の要件
- キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
R6年は誓約対応可 - キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
R6年は誓約対応可 - キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)
R6年は誓約対応可 - キャリアパス要件Ⅳ(改善後の年額440万円要件)
- キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)
- 月額賃金改善要件Ⅰ(月給による賃金改善)
R7年度から適用 - 月額賃金改善要件Ⅱ(旧ベースアップ等加算相当の賃金改善)
ベア取得済は関係なし - 職場環境等要件 R6年度中は区分ごと1以上、取組の具体的な内容の公表は不要
上記の要件で配分における条件は「4.」改善後の年額440万円要件と「6.」月給による賃金改善となります。ただし、「6.」の月額賃金改善要件Ⅰは R7年度から適用であるため、R6年度については考慮する必要がありません。考慮する必要がないため、R6年度の配分についての制約は「4.」のみとなります。「4.」は3加算の際の特定処遇改善加算を取る際の要件でした。既にクリアしている事業所さんの場合は関係ないですし、合理的な理由で440万円以上の人がつくれない場合も関係ありません。
令和6年度の処遇改善加算配分ポイントとは
上記の要件となるため、R6年度は従来のベア加算相当の月額賃金引上げ+補助金取得している場合はそれに準じた対応をしておけば配分は自由となります。配分が自由であるが故に一般的には一時金や賞与対応などに回すパターンになるかと思いますが、ここが今回落とし穴となる可能性があります。というのもR6年度の配分をR5年度に準じた形で行うと一時金や賞与に回す金額が増します。(※処遇改善加算等において月額賃金の引上げを最低限で行っている場合)これは加算率が増えているため、多くの事業所で加算総額が増えるからです。それ自体は喜ばしいことですが、月額賃金の引上げを最低限でやっており、一時金や賞与で対応をしているとR7年度から月額賃金への配分がR5年度の4倍以上の形となります。そのため、R6年度で一時金や賞与に回した原資がR7年度は月額賃金への配分比率を高める必要があるため、R7年度の一時金や賞与に回せる額が一気に目減りします。
勿論、加算総額自体が減るわけではないのでそれは安心して頂ければと思いますが、配分方法としてきちんと計算しておかないと職員から賞与が減ったと言われる可能性があります。
令和6年度の配分パターンは下の図のようにいくつか検討することが可能となります。
現在の渡し方と令和7年度以降の渡し方を踏まえた上で令和6年度の配分を検討して頂くと良いです!!
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処遇改善加算一本化で事務負担は軽減されるか?
令和6年6月から一本化される介護職員等処遇改善加算。事業者さんの中でも特に事務方でこの処遇改善加算等を担当していた方からすれば念願叶っての一本化となりましたが果たして事務負担は軽減されるのでしょうか?
3本の処遇改善加算等
処遇改善加算等は、介護職員処遇改善加算 、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の3本となっております。それぞれの加算にはきちんと目的があります。介護処遇改善加算は介護職の賃金引上げ。介護職員等特定処遇改善加算は経験・技能のある介護職員の優遇に重点化。介護職員等ベースアップ等支援加算は介護職員らの給与を月額3%ほど引き上げ。この目的のもとに対象職種や取得要件が絡みあって複雑な形となっており、事業所さんとしては頭を悩ます大きな原因となっておりました。
一本化による3つの大きな変更点
今回、処遇改善加算等を一本化するにあたって3つの大きな変更点がありました。
- グループごとの配分ルールを撤廃
- 新加算(Ⅳ)の1/2以上を月額賃金で配分
- 職場環境等要件の見直し
事業者さんからすれば配分方法や事務負担で一番手間のかかっていた介護職員等特定処遇改善加算のグループごとの配分ルールが撤廃されたことは朗報といえるでしょう。事実、このグループごとの配分ルールが複雑で面倒なため、他の二つの加算と比較して介護職員等特定処遇改善加算の算定率は低いものとなっておりました。
次に今回の加算で一番下の加算となる(Ⅳ)で貰える加算率の1/2以上を月額賃金で配分ですが、これは現在の介護職員等ベースアップ等支援加算で既に2/3以上を月額賃金で配分しているので問題ない。という風に思ってしまいがちですが、介護職員等ベースアップ等支援加算よりも加算率が遥かに高いため、事業者さんとしては配分方法の見直しが必要となります。三つ目の職場環境等要件の見直しですがこちらは内容、項目が増えており、事業者さんからすれば対応しなければならない項目が増える形となっております。
並列から直列へ、結局負担は変わらない!?
今回の介護職員等処遇改善加算、確かに一本化はされますが4段階にわかれる形となっております。私が最初に今回の介護職員等処遇改善加算の資料を見て感じたのは3本横並びであった加算が、一本化はされたけど直列の4段階に変化しただけで取得や事務負担は楽にならないのではないか!?です。本稿を書いている段階ではQ&Aがまだ出ておりませんので具体的な部分まで言及できませんが図表を見る限りでは、現在の3加算の要件をバラシて積上げた形になっております。
事業所さんからすればようやく楽になるかと思われた処遇改善加算等の一本化ですが、現時点ではその効果は薄いどころから初年度もしくは2年目においては加算の配分などを一から組立直しをする必要があるため負荷がかかることは間違いないでしょう。
この記事の執筆者
佐藤 慎也
介護経営コンサルタント
◆プロフィール
組織の仕組みづくりや人材教育などを得意分野とし、介護保険法はもちろんサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどの制度に精通。
介護経営コンサルタントとして、今までに50法人以上のコンサルティング実績を持ち、自らも介護事業の運営に携わっていたため、経営者からスタッフまで、それぞれの立場にあった指導・提案をすることで圧倒的な支持を得ている。
介護業界の動向を解説したメルマガの発行やコラムの執筆を行いながら、全国各地にて経営者・管理者向けのセミナーやスタッフを対象にした研修まで幅広い分野で年間100本以上の講演を行う。