介護業界関連コラム

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令和5年度ユニット型特養の建設費について

平米単価は調査以降過去最高の342千円

令和6年6月28日に福祉医療機構より2023年度 福祉・医療施設の建設費についてというタイトルでプレスリリースが発表されました。
この調査は2008年度(平成20年度)から開始されており、福祉施設(ユニット型特別養護老人ホーム及び保育所・認定こども園)ならびに医療施設(病院)の建設費の状況を取りまとめたものとなっております。

ユニット型特養の平米単価はここ十数年上昇傾向が続いており、全国平均で令和5年度はそれまで過去最高であった令和4年度の327千円を15千円も上回る342千円になりました。2012年度(平成24年度)が216千円であったため約1.6倍上昇しております。

地域ブロック別でみると関東・甲信越369千円、近畿360千円、九州・沖縄341千円、北海道 338千円、東北337千円、中部・北陸333千円、首都圏326千円となっており、首都圏が一番低い金額となっておりますが、こちらについては平米単価が高くなる傾向にある地域密着型特養(定員29名)が今回の首都圏のデータには入らなかったためとされております。

令和5年度ユニット型特別養護老人ホームの定員1人当たり建設費は15,080 千円

令和5年度の定員1人当たり建設費は全国平均で15,080 千円となっており、前年度から 1,041千円低下しております。平米単価が過去最高を記録しているのに定員1人当たりの建設費が下がっている理由は、定員1人当たり延床面積が前年度の49.7平米から2.9平米低下した46.8平米となったためとされております。

出典資料:福祉医療機構 2023年度 福祉・医療施設の建設費について

グラフの建設費の推移をみると2012年度(平成24年度)が10,071千円、2023年度(令和5年度)が15,080千円と1.5倍となっております。この間、介護報酬改定はマイナス改定やプラス改定がありながら、2023年度段階であれば2012年度の単位のほうが高い形となっております。人件費の高騰や水光熱費などの物価高騰を考えると経営環境が如何に厳しくなっているかが良くわかります。

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介護ロボットの重点分野を拡大。新たな名称は「介護テクノロジー利用の重点分野」

「ロボット技術の介護利用における重点分野」改め「介護テクノロジー利用の重点分野」へ

令和6年6月28日に厚生労働省よりロボット技術の介護利用における重点分野の改訂についてというタイトルでプレスリリースが発表されました。
令和7年度より昨今のICT ・ IoT 技術を用いたデータ利活用が進む状況や、介護現場に おける新たな社会課題を踏まえつつ、革新的な機器の開発促進・普及を目指すため 「 ロボット技術の介護利用における重点分野」の改訂を行うとともに、名称を「介護テクノロジー 利用の重点分野」に変更しますとのこと。

ロボット介護機器の開発の動向としては、当初は、移乗支援・移動支援機器等のメカ系の開発が多く見られましたが、近年はデジタル技術の進展に伴い、スマートフォンやタブレットなどのデバイスと連携させたICT機器の開発が活況となっていますのでこの流れは納得です。最近は介護の展示会などに行ってもセンサー分野の占める割合が年々大きくなっている印象を受けます。

重点分野に3分野追加 6分野13項目から9分野16項目へ

今回は既存の分野・項目の定義文について必要な見直しを行うとともに、新たに(1)機能訓練支援(2)食事・栄養管理支援(3)認知症生活支援・認知症ケア支援の3分野が追加されることになりました。令和6年度介護報酬改定においても機能訓練、栄養、口腔の三位一体による相乗効果を考え、栄養、口腔の一体取組で加算項目が創設されていたことを考えると介護テクノロジー分野においても(1)機能訓練支援(2)食事・栄養管理支援を追加することは非常に合理的ですし、取組がより推進していくと予想されます。(1)機能訓練支援(2)食事・栄養管理支援はLIFEを考えれば今後益々需要の増す部分で、ここが介護テクノロジー導入支援事業などの補助金が使えるようになると事業者さんとしては非常にありがたい話だったりします。実際、デイサービスや通リハの事業者さんからすれば見守りセンサーはそこまで必要ないけど、機能訓練支援は非常に重要ですし、ここの機器を購入する際に補助金が使えたらメリットが高いです。

(3)認知症生活支援・認知症ケア支援はどのサービス種別にも有効ですが、特にグループホームにとっては非常に良いお話だと思えます。令和6年度介護報酬改定において創設された生産性向上推進体制加算ですが、実際にグループホームを運営している事業者さんからすると加算(Ⅰ)の要件を満たす機器を導入するのはオーバースペックという見解を示す方も少なくありません。生産性向上推進体制加算はやはり特養や老健、特定施設でこそ効果が高いとみるべきです。
そういう意味では今回の重点分野の改訂は次期介護報酬改定の際に介護報酬や人員・設備基準の見直し等の制度上の対応を行うとされておりますので、今後も注目していく必要があります。

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令和6年度の介護ロボット導入支援事業の開始は全国的に遅れ気味?

都道府県での名称は旧来の介護ロボット導入支援事業のままか!?

2月のコラムで介護ロボット導入支援事業は発展的見直しが行われ、新たな名称は介護テクノロジー導入支援事業となりますという事をお伝えさせて頂きました。
例年、早い都道府県では4月からこの導入支援事業補助金を開始し、いち早く事業者さんに使ってもらおうとするところもあります。

令和6年度が始まり2ヵ月が経過し、各都道府県のホームページを確認してみると、昨年度の介護ロボット導入支援事業のページに上書きする形で今年度の情報を発信している都道府県が多く見受けられますが、名称は今まで事業者さんが慣れ親しんだ「介護ロボット導入支援事業」をそのまま使用継続している所が多いです。

この辺は急に名称変更をしてしまうと、検索ヒットしない場合や補助金が無くなったと思ってしまう方が出てしまうことを防ぐための配慮かもしれません。
各都道府県のホームページ内検索において、『介護ロボット』というキーワードを入れると令和6年度の情報が検索ヒットしますので確認を頂ければと思います。

令和6年度の介護ロボット導入支援事業の開始は全国的に遅れ気味?

先述した通り、各都道府県は昨年度の介護ロボット導入支援事業のページに上書きする形で今年度の情報を発信しているところが多いですが、令和6年度の傾向の一つに、開始が遅いという特徴があります。

令和5年度の6月15日時点では7県が開始済。3県が終了済という状態でした。
※前年度に申請が必要な長野県や後継事業に移行している山梨県を除く
一方で令和6年度の6月15日時点では1県が終了済という状態で、昨年と比較すると9県も開始が遅れている状態となります。

遅れている理由はおそらくですが要綱の作成に手間取っているからだと思われます。介護ロボット導入支援事業やICT導入支援事業は毎年、内容が拡充されています。拡充した内容を通知するために国から各都道府県に要綱を発出します。国から各都道府県への発出が遅れると、各都道府県も国の要綱をもとに都道府県独自の要綱を作成するため全体的に遅れが生じます。

今回、介護テクノロジー導入支援事業となり、新たにメニューに加わったものもあるため作成に少し時間がかかっていると思われます。とはいえ、各都道府県の担当者も年度内に出来るだけ早く機器やICTの導入をしてもらいたいと思っていますので申請期間や事業者選定期間を考えれば遅くとも7~8月頃には開始をしたいと考えていると思います。事業者さんは申請期間が始まったら速やかに申請ができるように準備をしておきましょう。

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介護ロボット導入支援事業は発展的見直し。 新たな名称は介護テクノロジー導入支援事業

令和6年3月中旬頃に成立予定の令和6年度予算ですが、介護事業者さんに馴染みであった介護ロボット導入支援事業・ICT導入支援事業がなくなります。
なくなりますと書いてしまうとこの導入支援事業自体がなくなってしまうかのように思ってしまいますが、正確には発展的見直しということで、新たに介護テクノロジー導入支援事業という名称に生まれ変わります。

これは今まで二つに別れていた支援メニューの再構築を行い、介護職員の業務負担軽減や職場環境の改善に取り組む介護事業者がテクノロジーを導入する際の経費を補助し、生産性向上による働きやすい職場環境の実現を推進するためとなっております。

新設される補助対象や補助要件は?

今回、補助対象として【介護ロボット】【ICT】【介護現場の生産性向上に係る環境づくり】以外に【その他】という項目が新たに加わります。内容は介護ロボットやICT等を活用するためのICTリテラシー習得に必要な経費となっております。具体的な内容は国の要綱がでてくるまでわかりませんが、介護ロボットやICTを有効活用するためには一定の知識が必要であり、その習得に係る経費を負担するということで、国としては生産性向上を推進していくためにはこのような知識にお金をかけることは重要とみなしているということになります。

補助要件としては介護ロボットのパッケージ導入モデル、ガイドライン等を参考に、課題を抽出し、生産性向上に資する取組の計画を提出の上、一定の期間、効果を確認できるまで報告すること。(必須要件)と記載されております。現在も補助を受ける要件として導入計画の作成や導入効果報告は要件とされておりましたのでこの文面だけではあまり差がないような感じはしますが、都道府県ごとにバラバラであった提出書式などがこれを機に統一するや、具体的な課題抽出などを求められる可能性があります。

【介護現場の生産性向上に係る環境づくり】

今まで見守りセンサーの導入に伴う通信環境整備として上限750万円がついていましたが、今回新たに、介護ロボット・ICT等の導入やその連携に係る費用が追加されております。また上限額も1,000万円に引き上げられております。金額がひきあげられている分、補助要件も今までよりも細かな内容が示唆されております。

出典資料:令和6年度予算案の概要(老健局)の参考資料(厚生労働省)

今回、介護ロボット導入支援事業等改めて介護テクノロジー導入支援事業ですが、別コラムでご紹介した生産性向上に資する介護ロボット・ICTの導入支援とは別ものとなります。令和6年度は介護ロボット等の導入に使える補助金が2つ出てくる可能性があります。令和威6年度介護報酬改定においてもテクノロジー機器活用を推奨する生産性向上推進体制加算が新設されておりますので、有効的な活用をご検討ください。

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令和5年度補正予算で生産性向上に 資する介護ロボット・ICTの導入を支援

令和5年11月29日に令和5年度補正予算が成立しました。この補正予算のなかには介護事業者さんとして見逃せない項目が入っております。それが【介護・障害福祉分野へのICT・ロボットの導入等による生産性向上や経営の協働化等を通じた職場環境の改善 】介護サービス事業者の生産性向上や協働化等を通じた職場環境改善事業です。

こちらは令和5年度の補正予算額として351億円もの金額がついております。介護人材不足、生産人口の減少が顕著な中で介護現場の生産性向上は国としても後押しをしなければいけない事項として、予算編成のなかで財務省がかなり金額をプッシュしてくれたという事業となっております。

支援メニュー

現在、公表されている資料に記載されている支援メニューは以下の三点となっております。

  1. 生産性向上の取組を通じた職場環境改善
    1. 生産性向上に資する介護ロボット・ICTの導入や更新・事業所の業務効率化に向けた課題解決を図るための業務改善支援及びこれと一体的に行う介護ロボット・ICT の導入や更新に対する支援
    2. 地域全体で生産性向上の取組を普及・推進する事業の実施
      • 地域の複数事業所における機器の導入に向けた研修や、地域のモデル施設の育成など、都道府県等が主導して面で生産性向上の取組を推進
      • 都道府県等が主導して、ケアマネ事業所と居宅サービス事業所の間で交わされるケアプランデータ連携システム等の活用を地域で促進し、データ連携によるメリットや好事例を収集
  2. 小規模事業者を含む事業者グループが協働して行う職場環境改善
    • 人材募集や一括採用、合同研修等の実施、事務処理部門の集約、協働化・大規模化にあわせて行う老朽設備の更新・整備のための支援等

この中でも注目は(1)①です。金額の負担割合は国・都道府県3/4、事業所が1/4となっておりますので介護ロボット導入支援事業よりも事業所負担が少ない形となっております。

※介護ロボット導入支援は要件を満たせば事業所負担が1/4となる場合もあります。
資料だけは詳細事項はわかりませんが、厚生労働省に確認すると内容的には介護ロボット導入支援とほとんど同じということでした。

実施主体は都道府県、実施期間は令和6年度中

この介護サービス事業者の生産性向上や協働化等を通じた職場環境改善事業ですが、実施主体は都道府県(都道府県から市町村への補助も可)となっております。つまりやるもやらないも都道府県次第となります。国としてはメニューを用意したので執行は都道府県へという状態になっており、厚生労働省の担当官も是非、皆さんに使って頂き、実績をあげて頂くことで補正予算でなく正式な予算への移行にして頂ければというような発言もしておりました。令和5年度補正予算となりますので令和6年度中までに実施する必要があります。

皆さんからすればやるもやらないも都道府県次第なら待ちの状態になってしまうかと思いますが、本稿をお読みの皆さんが行政に問い合わすことで、望んでいる事業者さんが多いという事を実感して動く都道府県もあるかと思います。

都道府県からメニューが出た際はどうぞ有効的な活用をして頂ければと思います。

この記事の執筆者

佐藤 慎也
介護経営コンサルタント

◆プロフィール
組織の仕組みづくりや人材教育などを得意分野とし、介護保険法はもちろんサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどの制度に精通。
介護経営コンサルタントとして、今までに50法人以上のコンサルティング実績を持ち、自らも介護事業の運営に携わっていたため、経営者からスタッフまで、それぞれの立場にあった指導・提案をすることで圧倒的な支持を得ている。
介護業界の動向を解説したメルマガの発行やコラムの執筆を行いながら、全国各地にて経営者・管理者向けのセミナーやスタッフを対象にした研修まで幅広い分野で年間100本以上の講演を行う。

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