介護制度改正・
介護報酬改定コラム

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令和9年度介護報酬改定では全国を3つの地域に分類?2040年に向けたサービス提供体制の在り方について

厚生労働省で令和7年1月9日から全5回に渡って行われた「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会。4月10日に「中間とりまとめ」が行われましたが、その内容は令和9年度介護報酬改定にも大きく影響を与えそうです。

3つの地域の類型の考え方

2040年に向かって、日本は大きく3つの地域に分類することができます。
1つ目は既に高齢人口のピークを過ぎた中山間・人口減少地域。
2つ目は2040年以降に高齢人口のピークを迎える大都市部。
3つ目は2035~2040年頃に高齢人口ピークを迎える一般市。 

65歳以上の人口は、全国の約50%の市町村において2020年以前に既にピークを迎えています。一方で東京や大阪などの都市部を中心とした約15%の市町村においては、2040年以降にピークを迎える見込みとなっており、高齢化や人口減少のスピードには地域によって大きな差が生まれています。

介護保険制度は全国一律の基準となっておりますが、制度開始から四半世紀が過ぎ、地域におけるサービス需要の変化は様々となっており、地域におけるサービス供給の状況も様々となっているため、2040年を見据えたサービス提供体制を検討する必要が出てきております。

中山間・人口減少地域 ~サービスを維持・確保するための柔軟な対応~

高齢者人口が減少し、サービス需要が減少するなかで、介護サービスが適切に提供されるよう、その需要に応じて計画的にサービス基盤の維持・確保を図っていく必要があります。 中間とりまとめでは、配置基準等の弾力化、包括的な評価の仕組み、訪問・通所などサービス間の連携・柔軟化、市町村事業によるサービス提供などを検討してはどうかとなっております。配置基準等の弾力化では、介護人材や専門職(看護師・ケアマネ・管理栄養士など)の確保が困難な中、常勤・専従要件や夜勤など、様々な配置基準を緩和していくことや、人材のシェアなどが検討されていきます。包括的な評価の仕組みでは、訪問系サービスの報酬は「回数」が基準となっておりますが、地方の場合、移動距離などの問題や突然のキャンセルなどに対応するように包括報酬を検討してはどうかとされています。また、訪問・通所などサービス間の連携・柔軟化は令和6年度報酬改定の審議時に一時、話題となった訪問介護とデイの複合型サービスが形を変えて検討してはどうかとなっております。

大都市部 ~需要急増を踏まえたサービス基盤整備~

人口の密度が高いことに加え、施設や住まい、在宅サービスの密度も高いことから、コンパクトなサービス提供が可能な大都市部においては、ICT や AI 技術も活用し、24 時間365 日の見守りを前提として、緊急時や利用者のニーズがある場合に、訪問や通所サービスなどの在宅サービスを組み合わせるような、包括的で利用者のニーズに応えるサービス提供の在り方を検討することも考えられるとなっております。

一般市等 ~サービスを過不足なく提供~

高齢者人口が増減し、サービス需要の状況が 2040 年までの間に増加から減少へ転じる見込みの中、既存の介護資源等を有効活用しながら、需給の変化に応じて、サービスを過不足なく確保することが必要であり、また近い将来に「中山間・人口減少地域」になることを見越して、早い段階から準備を進め、必要に応じた柔軟な対応を図っていく必要があるとされております。

中間とりまとめの結びには本検討会の内容については、社会保障審議会介護保険部会をはじめ関係審議会等で議論の上、所要の制度改正を行うとともに、医療介護総合確保基金等の必要な財政上の支援など、厚生労働省において、引き続き、必要な検討を行った上で、予算 の確保に努めるべきであるとなっておりますので、令和9年度の介護報酬改定の議論ではこちらの内容が骨子として出てくることが予想されます。

この記事の執筆者

佐藤 慎也
介護経営コンサルタント

◆プロフィール
組織の仕組みづくりや人材教育などを得意分野とし、介護保険法はもちろんサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどの制度に精通。 介護経営コンサルタントとして、今までに50法人以上のコンサルティング実績を持ち、自らも介護事業の運営に携わっていたため、経営者からスタッフまで、それぞれの立場にあった指導・提案をすることで圧倒的な支持を得ている。 介護業界の動向を解説したメルマガの発行やコラムの執筆を行いながら、全国各地にて経営者・管理者向けのセミナーやスタッフを対象にした研修まで幅広い分野で年間100本以上の講演を行う。

執筆者

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