介護制度改正・
介護報酬改定コラム
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令和6年度介護報酬改定のポイント⑥
LIFE対象範囲拡大と訪問介護+デイの複合型サービスは見送り
1月22日に厚労省から令和6年度介護報酬改定における改定事項の資料が公表されました。今回は公表された資料や今までの審議会の内容を基に筆者が思う今回の改定ポイントを何回かにわけて紹介したいと思います。
ポイント⑥LIFE対象範囲拡大と訪問介護+デイの複合型サービスは見送り
今回の令和6年度介護報酬改定において審議開始当初から注目がされていたのが、令和3年度介護報酬改定の主役となったLIFE(科学的介護推進体制加算)の対象範囲が居宅介護支援事業所や訪問系サービスにも拡大されるのか?ということと、訪問介護とデイサービスを組み合わせた複合型サービスが新しく創設されるのか?でした。共に、令和6年度介護報酬改定においては見送りとなりました。
LIFE対象範囲拡大は何故見送られたか?
前述したように令和3年度介護報酬改定の主役であったLIFE。今後の介護報酬改定の度に話題となる事は間違いないと思っており、私も令和3年度の介護報酬改定がスタートした後は至るところで、令和6年度の介護報酬改定では、現在対象とされていないサービス(居宅介護支援や訪問系サービス)においては確実にLIFE加算が創設されると自信を持ってお話をしておりました。無論、勝手な思い込みなどではなく、令和3年度から国は早々に訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFEの活用可能性の検証に関する調査研究事業を行っており、令和6年度介護報酬改定時には対象範囲を拡大することは確実ではないかと思われたからです。
鳴り物入りで始まったLIFEですが、届け出の段階で予想以上の申込が殺到しパンク。続いてデータ提出をしても中々フィードバックデータが返ってこず活用方法が上手くわからない。利用者個人のフィードバックデータが返って来たのは開始から2年以上が経過した令和5年6月から。返却されたフィードバックデータを解読するのが難しいなどの難点があり、令和6年度介護報酬改定ではこの辺の問題点、課題を解消するための対応を行うこととし、無理に対象範囲の拡大をする事をやめました。
訪問介護+デイの複合型サービスは何故見送られたか?
実施されていれば今回の改定の目玉の一つとなったであろう訪問介護+デイサービスの複合型サービス。そもそも訪問介護の介護人材不足に対応するために急浮上してきたお話となります。きっかけはコロナ禍においてデイサービス事業者へ、コロナ感染を気にしてデイに来ない人に対して訪問サービスの実施をすることで算定可能という特例措置を行いました。これが結果として実証事業のような形となり、人材不足としてなり手の少ない訪問介護事業の新しい存続の形の一手として案が上がってきました。
審議会でも何度か議論の対象となり、令和5年11月6日にはかなり具体的な詳細内容まで提示されました。
【11月6日に提示された具体的な内容 抜粋】
- 「訪問介護」と「通所介護」を組み合わせた地域密着型サービスとしてはどうか。
- 管理者は、1名の配置としてはどうか。
- サービスの登録定員の上限を 29 名以下とする。(デイの利用定員は 19 名以上)
- 基本報酬は包括払い(要介護度別)としてはどうか。
- 居宅介護支援事業所のケアマネが作成したケアプランに基づきサービスを行うこととしてはどうか。
それまでは賛成意見、反対意見それぞれがありましたが、11月6日の内容が提示されると一気に反対意見のほうに傾いた印象があります。複合型サービスは法律上、地域密着型サービスになるというルールがあるため、定員29名以下となってしまいます。そんな中で、地域密着型デイと区分けするためデイの利用定員は19名以上という縛りがついた形となりました。こんな限定的な形にされると事業者として手を挙げる所がかなり限られますし、この内容ですと対応幅が非常に限定されてしまうこともあり、多くの委員が反対意見を掲げました。これを受けて厚生労働省は令和5年12月4日の審議会で見送りを固めました。
訪問介護とデイサービスを運営している事業者さん、特に地方でサービス提供をしている方々からは人材の有効活用ができるため、当初歓迎されていたようなお話ですが、内容を詰めていくたびに、現状のサービス実態を歪める形を取らざるを得ないようなお話となり、やるメリットが見いだせない結果となっておりましたので見送りした厚労省は英断だったといえると思います。
今回は見送りとなったLIFE対象範囲拡大と訪問介護+デイの複合型サービスですが、完全に消えたわけではなく令和9年度介護報酬改定の議論には再度テーブルに乗ってくるお話となります。
この記事の執筆者
佐藤 慎也
介護経営コンサルタント
◆プロフィール
組織の仕組みづくりや人材教育などを得意分野とし、介護保険法はもちろんサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどの制度に精通。
介護経営コンサルタントとして、今までに50法人以上のコンサルティング実績を持ち、自らも介護事業の運営に携わっていたため、経営者からスタッフまで、それぞれの立場にあった指導・提案をすることで圧倒的な支持を得ている。
介護業界の動向を解説したメルマガの発行やコラムの執筆を行いながら、全国各地にて経営者・管理者向けのセミナーやスタッフを対象にした研修まで幅広い分野で年間100本以上の講演を行う。
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