介護経営コラム
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令和5年介護業界における腰痛、転倒の労働災害は増加傾向
死亡者数は過去最少、休業4日以上の死傷者数は3年連続で増加
令和6年5月27日(月)厚生労働省の労働基準局安全衛生部安全課が令和5年の労働災害発生状況を公表致しました。それによると労働災害による死亡者数は755人(前年比19人減)と過去最少となった一方で休業4日以上の死傷者数は135,371人(前年比3,016人増)と3年連続で増加、また過去20年で最多となったそうです。
労働災害を減少させるために国や事業者、労働者等が重点的に取り組む事項を定めた中期計画である「第14次労働災害防止計画」(令和5年度~令和9年度)を立てた初年度でしたが結果としては、休業4日以上の死傷者数は増加してしまいました。
介護業界が属する社会福祉施設の数値を見てみると令和5年の死傷者数は14,049人
令和4年の死傷者数が12,780人でしたので1,269人の増加、増減率は9.9%となり、10%程度増加してしまっております。
令和5年介護業界における腰痛、転倒の労働災害は増加傾向
社会福祉施設における労働災害発生状況(事故の型別)
業種別の社会福祉施設における労働災害発生状況を見てみると、いわゆる腰痛災害といわれる動作の反動・無理な動作が令和4年と比較すると400件近く増加しています。
また、転倒災害も同様に令和4年と比較すると400件近く増加しています。
以前の231226介護業界における労働災害発生状況コラムで腰痛災害においては、介護職員さんの高齢化×ご利用者さまの体格アップが要因の1つではないかと指摘させていただきました。もちろん、事業者さんとしては抱え上げない介護や機器の活用などの取組を積極的に行ってくださっているとは思いますがそれにしても大幅な増加傾向といえます。
令和6年度の介護報酬改定においては、国はテクノロジー機器を活用した生産性向上を推進すべく新たに生産性向上推進体制加算を設けましたが、これだけ労働災害が増加していることも踏まえれば入浴支援機器として入浴リフトを導入することや移乗介助機器を導入することも加算要件の1つとして検討するべきでしょう。
事業者さんとしては加算の有無に関係なく介護職員さんに長く働いてもらう環境を整備していくことは今後の経営・運営において益々重視しなければいけない点の1つです。
この記事の執筆者
佐藤 慎也
介護経営コンサルタント
◆プロフィール
組織の仕組みづくりや人材教育などを得意分野とし、介護保険法はもちろんサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどの制度に精通。
介護経営コンサルタントとして、今までに50法人以上のコンサルティング実績を持ち、自らも介護事業の運営に携わっていたため、経営者からスタッフまで、それぞれの立場にあった指導・提案をすることで圧倒的な支持を得ている。
介護業界の動向を解説したメルマガの発行やコラムの執筆を行いながら、全国各地にて経営者・管理者向けのセミナーやスタッフを対象にした研修まで幅広い分野で年間100本以上の講演を行う。
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