介護の常識を変えた「動かせるお風呂」 介護・自立支援設備「wells」のこれまで、これから
積水ホームテクノ株式会社は、介護・自立支援設備「wells(ウェルス)」を通じ、介護施設や高齢者住宅・病院における入浴・移乗などの課題を解決する先進的なソリューションを提供しています。超高齢化社会が進む中、介護現場では慢性的な人材不足や介護職員の身体的負担、利用者のその人らしい暮らしの継続支援が大きな課題となっています。「wells」は、長年培った住環境・水回り設備の技術を基盤に、利用者の自立支援と介護職員の負担軽減・業務効率化を両立する設備設計を追求しています。「wells」がどのように現場の声と向き合い、入浴環境から日本の介護を変えようとしているのか。wellsの事業・開発に携わってきた3名に話を聞きました。
◆語り手
- 積水ホームテクノ株式会社 取締役 執行役員 事業統括部長 山岸 裕司(以下・山岸)
- 積水ホームテクノ株式会社 事業統括部 ウェルスBU長 坪井 重人(以下・坪井)
- 積水ホームテクノ株式会社 開発部 浴室開発グループ 西尾 信洋(以下・西尾)
(以下、動画の文字起こし)
- 山岸:入浴環境から日本の介護を変えていく。
- 坪井:お風呂を誰にでも同じようにリフレッシュできる場所に。
65歳以上人口が3割に迫り 超高齢社会の定義を大幅に上回る今の日本。
※2026年8月1日現在(概算値)(出典:「人口推計」総務省統計局・65歳以上の人口 3,623万人 人口に対する割合29.5%)介護する人・される人双方にとって心地よい環境を整備することは重要です。
しかし今 介護現場では人手不足が進行し2040年度には約57万人の介護職員の不足が見込まれています。(出典:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について(厚生労働省))そこで大きな負担になっているのが入浴介助。
入浴介助は、抱え上げなどによる身体的負担や利用者の転倒・転落の危険など、精神的負担が大きい業務の1つです。そんな中、2000年の介護保険法成立に14年も先駆け、1986年から介護する人・される人を支えてきたのが積水ホームテクノです。
全国10,000施設以上で導入・シェアNo1の介護用浴室「wells」
介護の常識を変えた「動かせるお風呂」とは。
初めて高齢化率が10%に達した翌年がwellsのはじまり
1963年より国産第1号プラスチック浴槽「セキスイバス」を奈良工場で生産し日本のバス文化に大きな変革をもたらした積水ホームテクノ。
wellsの始まりは日本の高齢化率が初めて10%に達した翌年1986年のことでした。
山岸:原点は1986年です。
当時の通商産業省と建設省との官民協業という形で高齢者の方、ハンディキャップがある方の住まいやすさについて、研究開発を進めるところからスタートしました。介護も今は「施設介護」がメジャーになってきていますが、当時は「家族介護」が中心で家庭内のクローズドの中で介護が行われていました。
ただ一方で、核家族化が進んだり家族介護の限界が見えてきたのも1980年代後半の話なので安心安全な自立した設備の開発が必要だと強く感じました。
*2001年以前の取り組みは、積水ホームテクノの前身である積水化学工業における事業活動です。(2001年に積水化学住設部門と販売会社6社が合併し現在の積水ホームテクノを設立)
加齢による変化を補う上で重要な可変性 1200浴槽 安全・安心の考え
高齢者の快適な住環境について考える中で重要な3つの考え方が浮かび上がってきたといいます。
山岸:年齢とともに生じる、身体状況の変化や認知の状況の変化を補っていきながら安心安全で極力自立した状態を促すことが「加齢配慮」であると考え、その環境にもっていきたいと考えました。
その中で「変えることができる性質」=「可変性」というキーワードを持ち出して加齢の変化に対応できるような浴室設備の開発を進めてきました。
浴室は入ってつま先を伸ばしたときに反対側の浴槽の壁に足がつくようなずるずると入り込んだり 潜り込んでいったりしない形の1200サイズの「1200浴槽」 いわゆる1m20cmの浴槽がベストではないかと考えました。
また、浴槽に入る時 片足立ちで またいで入るのが非常に危ないので一旦腰掛けてから湯船に入る「移乗入浴」が「安全・安心」ではないか
このあたりを具体的な商品へ落とし込んでいきました。
安全・安心 可変性 そして1200浴槽と今のwellsを支える考え方が生まれ1988年に介護の必要性が高い方にも対応できる浴室が販売されるとその後続々と3種類の商品を発売。
しかし当初から高い壁が立ちはだかったそうです。
市場がまだない 大きな逆境を乗り越えた大きな変化
山岸:当時はですね、全くもって時代が早すぎたといいますか高齢化が進むことは分かっていましたので、在宅介護・個人に向けた商品販売を展開しようとスタートをきりましたが、(普通の)浴室の値段の倍くらいするものだったのでなかなか市場に普及というところには至らなかった。
市場がまだない。そんな逆境の中でも研究開発を進めたといいます。
山岸:当時の経営層が これからの日本の最大の課題は「高齢化・超高齢社会の到来」と認識していました。「今はダメだけど絶対にいつかお役立ていただける日が来るんじゃないか」と強く感じてこの事業を継続してきた。その意思を受け継いでいるつもりではいます。
介護保険法が2000年に制定されると、ここで大きな転換期を迎えます。
山岸:在宅介護だけではなく施設介護を、ちゃんとサービスとして成り立たせようという国の動きに合わせて「可変性」という特徴は施設介護でこそ効果が発揮させられるのではないかと事業の軸足を個人向けから施設向けに変えたのが大きな変化になっていると思います。
普通は 浴槽の位置ってもう決まっているのでどっかに動かそうっていう感覚になかなかならないんです。
先ほどの加齢配慮に近い考え方ですが、右側に片麻痺がある方は右側が動かないので右側からお風呂に入れない。施設は色んな方が浴室を使われるので「その人に合わせた方向に浴槽を持っていってあげられたらいいのに」というお声を介護職員さんからもいただきました。
「じゃあ ちょっと挑戦してみるか」ということで工事しないと変えられなかった浴槽を介護職員さんだけでも簡単に動かせるように進化させています。
ユーザー可変の介護施設での需要は高く2005年から2015年には導入施設数がおよそ17倍にも拡大。介護保険法制定の14年前から着々と進めた研究。やっと時代が追いつきました。
介護する人 される人 つくる人にも優しい介護浴室wells
wellsを製造している奈良積水株式会社では介護する人・される人 双方にとって優しい介護浴室が作られています。
西尾:こちらの浴槽は「KGS8」の2020サイズです。自立支援から介助者を入れての介助入浴に対応した浴室です。
自立支援の方は手すりをつかんでいただいて進んでいただき移乗入浴が出来る浴槽になっています。掴みやすい姿勢保持のためのグリップや浴槽の中にもグリップがあります。小柄な利用者さんは身体が浮いてきたり溺れるのが非常に危険なので、姿勢保持のためにグリップを掴んでいただいて安心安全に入浴していただく形になっています。さらに介護者が簡単に利用者の方の身体の近くに手すりを持ってきて、立ち座りだったり姿勢の保持に使えるように動かせる「可変」を兼ね備えた手すりを設けています。
この浴槽には他にも介護に関わる人にとって優しいポイントがあるといいます。
坪井:腰を据えて入浴をお手伝いできるようになっています。
利用者さんは裸で入浴されるので(怪我のリスクが高い)介助者は神経を尖らせながら入浴介助をします。介助スペースが狭いと力が入りにくかったり、スペースがないと無理な不良姿勢で入浴介助を行うことになります。少しでも負担軽減できるのが「可変」による空間の使い方になります。「腰痛が減った」「利用者さんに合わせた入浴が出来るようになった」と非常に多くの施設からありがたい言葉をいただいています。
BIMデータも公開して浴室を設計する設計士さんにも扱いやすい商品にさせていただいています。
2014年にはリフトキャリーの販売を開始し、介護する人にさらに優しい環境を作り続けています。
坪井:今まではどうしても入浴介助の時に二人介助で抱え上げながら入浴させることが多かったのですが、非常に簡単に 楽に入浴を楽しんでいただける介助ができるようになっています。利用者さんからすると今まで二人の介助者に抱え上げられながら非常に大変な思いをして入浴していたのが解消されると思います。
西尾:さらに2026年7月からは「マイクロバブル」を搭載した浴槽も発売しています。こすり洗いをしなくても身体の汚れが浮いてきて きれいになるので皮膚への負担軽減にも時短にもつながります。
2025年度積水化学グループ内のESG経営表彰式で200以上の事業部・関係会社の中から 特に顕著な功績が認められ「積水化学社長賞」「プレジデント賞」を積水ホームテクノが受賞。社会課題解決が具体的な形となり5年連続で最高益更新が継続していることが評価されました。
西尾:培ってきた技術というのはそのまま生かしつつも世の中がどんどん多様化していく中で幅広い視点での開発だったり商品を突き詰めていくことは非常に大切になると思います。
開発の人間としては 様々な人に向けて安全安心に使えるようなものを開発していきたいと思っています。
入浴環境から日本の介護を変えていく
2040年には団塊ジュニアが65歳を超え 高齢人口がピークを迎えます。
wellsの、これからとは。
坪井:諸先輩方がwellsをここまで大きくするための礎を築いて今日まできていると思います。2040年に向けて高齢者の方が増える日本の現状を鑑みると私たちの事業、wellsは より社会に貢献していくことに注力して2040年を迎えられたらいいなと思います。
西尾:やっぱり湯船に浸かることの楽しさとか快適さみたいなのもあるのでそれが進化した形になっていくんじゃないかなと思っています。
山岸:「入浴環境から日本の介護を変えていく」少し大きいビジョンがある中で、入浴だけにとどまるかどうかはわかりませんが長年培ってきている、いろいろな知見があったりするので介護士さんが非常に重労働で大変だと言われている環境の中でも、この仕事をやりたいと言ってくださる方が増えるような、なんとかそれを入浴介助のところから発信できたらいいなと思っています。
介護するひとも されるひとも つくるひとも。wellsはこれからも支え続けます。