介護経営コラム
目次
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令和7年より人材紹介会社におけるお祝い金・転職勧奨禁止へ
職業安定法施行規則の一部を改正する省令案について
令和6年9月17日行われた第374回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会で①お祝い金禁止の実効性を確保するための方策を含め、法令遵守徹底のためのルールと施行の強化②職種ごとの紹介手数料実績を含め、雇用仲介事業のさらなる見える化の促進の成案を取りまとめたとの公表がされました。
こちらについては以前より、医療・介護業界において問題視されていた、人材紹介会社におけるお祝い金や転職勧奨について禁止をするため、職業安定法施行規則の一部を改正するということです。
令和7年1月1日より施行予定
今回の対策強化として、大きくは3つあります。
1つ目は人材紹介会社が就職先を紹介してから2年間は転職の勧奨を行ってはいけない。
2つ目は過度なお祝い金を渡してはいけない。
これらについては、事業者さんからの紹介料を原資に、就業者にお祝い金を渡し、一定の期間が経てば紹介会社は就業者へ転職勧奨を行い、別の事業所へ斡旋。事業所からは紹介料を貰い、就業者にはまたお祝い金を渡すといった就業者と紹介会社が得をする悪質なビジネスモデルを駆逐するための対策となります。
3つ目は職種ごとの紹介⼿数料実績の⾒える化です。
これをすることで職種ごとの平均紹介手数料を見える化し、一部エリアで高騰している金額に対して釘を刺す形をとります。
施行は令和7年1月1日の予定となっております。施行期日は令和7年4月1日となっておりますので、仮に1月1日施行されなくても4月1日までには実施される運びとなります。もちろん、事業者さんからすれば一刻も早く施行して欲しい内容になるかと思います。1月1日予定通りに施行されることを願うばかりです。
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2040年までに57万人必要!!
第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数を公表
令和6年7月12日厚生労働省の社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室が第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づく介護職員の必要数とりまとめを公表致しました。
この必要数は第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、各都道府県が推計した介護職員の必要数を集計したものとなっております。
2026年度までに25万人、2040年度までには57万人の介護職員が必要
2022年度(令和4年度)における介護職員数が約215万人。2026年度(令和8年度)に必要な介護職員数が約240万人となっており25万人、年あたり6.3万人の純増が必要となります。また、2040年度(令和22年度)に必要は介護職員数が272万人となっており57万人、年あたり3.2万人の純増が必要となります。
国においては、(1)介護職員の処遇改善、(2)多様な人材の確保・育成、(3)離職防止・定着促進・生産性向上、(4)介護職の魅力向上、(5)外国人材の受入環境整備など総合的な介護人材確保対策に取り組む。となっておりますが、こちらは第8期の計画でも同様の内容が記載されており当時の資料では2019年度(令和元年度)の介護職員数が約211万人となっており3年間で4万人しか増えていないのが実情です。また、都道府県別の必要数を見てみると、東京、大阪、北海道、神奈川、埼玉など人口の多い都道府県ほど需給ギャップが大きい形となっております。
2026年度に向かって年あたり6.3万人の介護職員が必要となりますがとても今の対策内容で職員が集まるとは考えづらいです。各事業所さんはそれぞれの実情に応じた対策を行い、備える必要があります。
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外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会で訪問介護への従事を解禁
外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 中間まとめを公表
令和6年6月26日(水)厚生労働省の社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室が外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 中間まとめを公表致しました。深刻な介護人材不足が見込まれるなかで令和6年3月には特定技能の受入れ見込数(令和6年度から5年間)を 13.5 万人とすることが閣議決定されており、そんな中で今までの外国人介護人材の働き方に制限がかかっていた内容に見直しをかけた形になります。
訪問介護への従事を解禁
検討会は令和5年7月から開始され、令和6年6月までに7回開催されましたが、早い段階からテーマの中心となっていたのが訪問介護への従事を解禁するか否かでした。
訪問介護では利用者さんと介護者が1対1で業務を行うことが基本であり、適切な指導体制の確保、権利保護 、在留管理の観点に十分配慮する必要があることから、 技能実習等に おける従事は認められておりませんでした。一方でEPA介護福祉士については一定の要件を満たせば従事は認められていましたし、在留資格「介護」で就労する介護福祉士についても訪問介護への従事は認められておりました。EPA介護福祉士の従事において重大なハラスメント事案等がなく円滑に業務が実施されている実績なども鑑みて、今回、訪問介護員等の人材不足や高齢化が進んでいる中で必要なサービスを将来にわたって提供できるように対応していくため、ケアの質の担保や権利保護には留意しつつ、 本人の希望等も踏まえながら、外国人介護人材の訪問介護への従事を解禁する運びとなりました。
もちろん無条件で解禁というわけにはいかず、いくつかの要件を満たす必要があります。1つめは訪問介護においては、日本人においても従事する際の条件として介護職員初任者研修を修了した有資格者以上であるというきまりがあるため、外国人介護人材も同様の運びとなります。また、事業者に対しては以下の5要件を満たすことが求められております。
外国人介護人材が訪問介護に従事する際に事業者が満たすべき5要件
- 研修について、訪問介護の基本事項、生活支援技術、利用者・家族・近隣とのコミュニケーション(傾聴、受容、共感などコミュニケーションスキルを含む)、日本の生活様式などを含むものとすること。
- サービスの提供を1人で適切に行えるよう、一定期間、サービス提供責任者が同行するなど必要なOJTを行う。その回数や期間については、利用者や外国人の個々状況により、事業者が適切に判断すること。
- 業務内容や注意事項等について丁寧に説明を行い、その意向等を確認しつつ、外国人介護人材のキャリアパスの構築に向けたキャリアアップ計画を作成すること。
- ハラスメント対策の観点から、受入事業所内において、
- ハラスメントを未然に防止するための対応マニュアルの作成・共有、管理者等の役割の明確化
- 発生したハラスメントの対処方法等のルールの作成・共有などの取組や環境の整備
- 相談窓口の設置やその周知等の相談しやすい職場環境づくり
- 利用者・家族等に対する周知等の必要な措置を講ずること。
- 介護ソフトやタブレット端末の活用による記録業務の支援、コミュニケーションアプリの導入や日常生活や介護現場での困りごと等が相談できるような体制整備など、 ICT の活用等も含めた環境整備を行うこと。
尚、訪問介護への従事解禁は早ければ25年度から施行される見通しとなります。訪問介護事業において外国人介護人材の活用を考える事業者さんは早めに体制の準備を整えておく必要がありそうです。
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令和5年介護業界における腰痛、転倒の労働災害は増加傾向
死亡者数は過去最少、休業4日以上の死傷者数は3年連続で増加
令和6年5月27日(月)厚生労働省の労働基準局安全衛生部安全課が令和5年の労働災害発生状況を公表致しました。それによると労働災害による死亡者数は755人(前年比19人減)と過去最少となった一方で休業4日以上の死傷者数は135,371人(前年比3,016人増)と3年連続で増加、また過去20年で最多となったそうです。
労働災害を減少させるために国や事業者、労働者等が重点的に取り組む事項を定めた中期計画である「第14次労働災害防止計画」(令和5年度~令和9年度)を立てた初年度でしたが結果としては、休業4日以上の死傷者数は増加してしまいました。
介護業界が属する社会福祉施設の数値を見てみると令和5年の死傷者数は14,049人
令和4年の死傷者数が12,780人でしたので1,269人の増加、増減率は9.9%となり、10%程度増加してしまっております。
令和5年介護業界における腰痛、転倒の労働災害は増加傾向
社会福祉施設における労働災害発生状況(事故の型別)
業種別の社会福祉施設における労働災害発生状況を見てみると、いわゆる腰痛災害といわれる動作の反動・無理な動作が令和4年と比較すると400件近く増加しています。
また、転倒災害も同様に令和4年と比較すると400件近く増加しています。
以前の231226介護業界における労働災害発生状況コラムで腰痛災害においては、介護職員さんの高齢化×ご利用者さまの体格アップが要因の1つではないかと指摘させていただきました。もちろん、事業者さんとしては抱え上げない介護や機器の活用などの取組を積極的に行ってくださっているとは思いますがそれにしても大幅な増加傾向といえます。
令和6年度の介護報酬改定においては、国はテクノロジー機器を活用した生産性向上を推進すべく新たに生産性向上推進体制加算を設けましたが、これだけ労働災害が増加していることも踏まえれば入浴支援機器として入浴リフトを導入することや移乗介助機器を導入することも加算要件の1つとして検討するべきでしょう。
事業者さんとしては加算の有無に関係なく介護職員さんに長く働いてもらう環境を整備していくことは今後の経営・運営において益々重視しなければいけない点の1つです。
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財務省からの提言 高齢者住宅の報酬を特定施設の利用上限へ見直すべき
高齢者住宅の報酬を特定施設の利用上限へ見直すべき
財務省が4/16に行った財政制度審議会の『こども・高齢』の資料の中に『高齢者向け施設・住まいにおけるサービス提供の在り方』について論じられている箇所があります。
そこでは【改革の方向性】(案)として以下のような内容が記載されております。
有料老人ホームやサ高住における利用者の囲い込みの問題に対しては、訪問介護の同一建物減算といった個別の対応策にとどまらず、外付けで介護サービスを活用する場合も、区分支給限度基準額ではなく、特定施設入居者生活介護(一般型)の報酬を利用上限とする形で介護報酬の仕組みを見直すべき。
勿論、この内容は財務省からの提言であり直ちに実行されるものではありませんが、財務省としては高齢者住宅に介護サービスの制限をかけ、給付費を抑制したいという考えが良くわかる内容となっております。
令和6年度の介護報酬改定で同一建物減算の割合を10%から12%に引上げましたが、事業所を敷地外に移したり、敷地外でサービス提供する利用者割合を10%以上にすれば12%の減算適用からは免れますので、財務省からしたら財政的に大きな抑制にはならないと思っているかもしれません。
仮に財務省が今回提言しております、区分支給限度基準額ではなく、特定施設入居者生活介護(一般型)の報酬を利用上限とする形で介護報酬の仕組みを見直した場合、介護度5の方で使えるサービス単位が約1万単位減少、介護度4の方で約8,000単位減少、介護度3の方で約7000単位減少になります。
勿論、全ての高齢者住宅等で重度者の方に対して限度額いっぱいいっぱいのサービスを入れているわけではありませんが、介護度が重くなればなるほどサービスを多く使うことが一般的ですから、これを実施された場合、多くの高齢者住宅で経営が立ち行かなくなります。
財務省からすれば給付抑制したいための一手ではあるかと思いますが、事業継続できない事業所が続発すれば困るのは利用者、家族、自治体となります。今後、この提言がどのような形で影響してくるかはよく見ておかなければいけませんね。
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24年度介護報酬改定 介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進として新たに加算創設
介護現場における介護ロボット導入概況
令和5年2月27日(月)に厚生労働省で開催された第26回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会にて(5)介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業(結果概要)(案)が示されました。
介護ロボットの導入概況
- 「見守り支援機器」の「入所・泊まり・居住系」における「導入済み」の回答割合は 30.0%
- 「入浴支援機器」の「入所・泊まり・居住系」における「導入済み」の回答割合は 11.1%
- 「介護業務支援機器」の「入所・泊まり・居住系」における「導入済み」の回答割合は 10.2%
- 「移乗支援機器」の「入所・泊まり・居住系」における「導入済み」の回答割合は 9.7%
調査表明 | 縦置き浴槽タイプ KGS-T series |
横置き浴槽タイプ KGS series |
多機能コア KGS-B series |
---|---|---|---|
①訪問系 | 3,775 | 1,346 | 35.7% |
②通所系 | 2,600 | 922 | 35.6% |
③入所・泊まり・居住系 | 9.736※ | 2,958 | 30.4% |
合計 | 16,111※ | 5,226 | 32.4% |
結果を見ると、見守り支援機器については緩やかですが導入が進んでいる印象を受ける一方で、移乗支援機器や入浴支援機器についてはまだまだ導入されていない事業者さんが多いことがわかります。勿論、介護ロボットというテクノロジー機器の分野になり、天井走行リフトや支柱式リフト、床走行式リフトなどはカウントされておりませんので、介助負担を軽減する機器を導入されている事業者さんはもっと多いことだと思います。
介護ロボットをいずれも導入していない理由としては、③「入所・泊まり・居住系」では、導入費用が高額であるという理由が64%を占める形となっております。
現状、介護ロボット、テクノロジー機器に関わらず、介護現場で必要とされる機器は高額であり、贅沢品という位置づけになっているかと思いますが、人ひとり辞めてしまった場合にかかる損失コストという観点で考えれば、機器は高額ではあるが必需品であるという考え方もできると思います。
24年度改定で新加算創設
2024年度介護報酬改定の大項目の3番目には『良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり』という目標が掲げられており、介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進として新たに加算が設けられました。
加算要件としては、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うことを評価する。とされております。
センサーなどの見守り機器やインカム等のICT機器、介護記録の作成の効率化に資するICT機器などの導入が対象となっており、残念ながら今回の要件では介助者の身体負担を軽減する入浴支援機器・移乗支援機器などについての機器は対象となっておりませんが、こちらも加算対象の要件とすることで導入する事業者さんの後押しになるのではないかと思いますので気が早いですが2027年度の改定では対象項目に加わることを期待したいです。
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厚労省 第14次労働災害防止計画においてノーリフトケアを導入している事業場の割合増加を明記
第14次労働災害防止計画について
令和5年2月13日(月)労働政策審議会が加藤厚生労働大臣に対し「第14次労働災害防止計画」について答申を行いました。
その中で労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進として介護職員の身体の負担軽減のための介護技術(ノーリフトケア)や介護機器等の導入など既に一定程度の効果が得られている腰痛の予防対策の普及を図ることが明記されました。第14次労働災害防止計画は、2023年度を初年度とする5年間を対象としたもので、厚生労働省では、この答申を踏まえて計画を策定し、 目標の達成に向けた取組みを進めることになります。
介護現場における2つの指標
介護現場等における具体的な指標としては以下の2点を掲げております。
- 介護・看護作業において、ノーリフトケアを導入している事業場の割合を2023年と比較して2027 年までに増加させる。
- 増加が見込まれる社会福祉施設における腰痛の死傷年千人率を2022 年と比較して2027 年までに減少させる。
※H29年~R4年の6年間で腰痛労災件数は1.5倍以上となっております。
さらに国としては『中小事業者の安全衛生対策に取り組む意欲を喚起する一助として、安全衛生対策に取り組むことによる経営や人材確保・育成の観点からの実利的なメリットや安全衛生対策に取り組まないことにより生じ得る損失について、研究を進め、その成果を広く周知する。この際、できるだけ中小事業者の身近な例を研究対象とし、より納得しやすい事例が提供できるよう工夫する。』ことや『事業者が安全衛生対策に取り組まないことにより生じ得る損失等の他、事業者の自発的な取組を引き出すための行動経済学的アプローチ(ナッジ等)などについて研究を進め、その成果を広く周知する。』ことを明記しております。
これからの介護経営における欠かせない取組
ご存じのように介護業界においては人材確保が喫緊の課題となっております。労働災害などにより休職が発生すると現場の負担は増大します。まして、休職から職場に復帰できずに人が辞めてしまうと大打撃となります。このような場合、私の試算になりますが人が一人休職してしまいその間の人員を派遣などでやり繰り、そして結局復帰できないため、新たな雇用をする必要がでてくるため、ざっくりですが100万円程度必要となります。
上記で書かれている『安全衛生対策に取り組まないことにより生じ得る損失』、いわゆる損失コストを考えれば働く労働環境を整えることは必須事項といえます。
現場で働く職員さんが長く、元気に、健康で働くためにも介護ロボットや福祉用具機器を活用した抱え上げない介護を実践していく事は、これからの介護経営においては欠かせない取組になりますね。
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介護業界における労働災害発生状況
R29年度→R4年度で腰痛災害の発生が1.5倍に
令和5年5月23日(火)厚生労働省の労働基準局安全衛生部安全課が令和4年の労働災害発生状況を公表致しました。それによると労働災害による死亡者数は774人(前年比4人減)と過去最少となった一方で休業4日以上の死傷者数は132,355人(前年比1,769人増)と過去20年で最多となったそうです。
社会福祉施設における労働災害発生状況(事故の型別)
業種別の社会福祉施設における労働災害発生状況を見てみると、H29年度~R4年度の間で動作の反動・無理な動作、転倒の2項目で労働災害の発生が1.5倍増になっていることがわかります。動作の反動・無理な動作はいわゆる腰痛災害にあたる内容となっております。
働く人の高齢化×ご利用者さまの体格アップが要因?
厚生労働省は平成25年に「職場における腰痛予防対策指針」を改訂し、介護・看護作業における抱上げに関して「移乗介助、入浴介助及び排泄介助における対象者の抱上げは、労働者の腰部に著しく負担がかかることから、全介助の必要な対象者には、リフト等を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないこと。また、対象者が座位保持できる場合にはスライディングボード等の使用、立位保持できる場合にはスタンディングマシーン等の使用を含めて検討し、対象者に適した方法で移乗介助を行わせること。」と示しました。このような対策の指針などもあり、近年ノーリフトケア活動に積極的に取り組む都道府県や事業者さんなどが多く見受けられるようになりました。
しかし、上記の社会福祉施設における労働災害発生状況(事故の型別)が示すように腰痛災害は減るどころか増加の一途をたどっております。(R3→R4は若干数減少)
この原因はなんなのか?明確な答えがあるわけではありませんが、私の推測では介護現場で働く人の高齢化が要因の1つではないかと思っております。下記の円グラフは毎年夏に介護労働安定センターが公表する介護労働実態調査結果報告書のデータを元に介護職(訪問介護・施設介護職)約45,000人の年齢分布を作成したものとなっております。
このグラフを見て頂くとわかるように60歳以上の介護職が全体の27%、全体の1/4以上を占めていることがわかります。2014年段階では60歳以上の介護職は全体の17.4%でしたので毎年1%以上の割合で増加していることになります。人生100年時代と呼ばれるなかで働く人の年齢が高くなることは自然の摂理かもしれませんが、やはり若い頃と比較すると力などは弱くなりますし、怪我のリスクも高いです。介護職の平均年齢は50歳以上となっており、他の産業と比べると平均年齢が高くなっております。腰痛災害が増加している要因の1つはこの年齢によるものが大きいのではないかと思います。
それともう一つの要因がご利用者さまの体格アップではないかと思います。こちらについてはデータでお示しするものはありませんが、10年~15年前に比べると介護施設のご利用者さまの体格がずいぶんアップしているように感じます。私が現場に携わっていた頃は小柄な女性のご利用者さまが多く、男性のご利用者さまはそこまで多くありませんでした。しかし、時代は変わり今では男性のご利用者さまも多くおられますし、昔に比べると体格の良い方も格段に増えました。体格の良いご利用者さまは高齢の女性職員が抱え上げを行えば当然、腰痛になるリスクは高くなります。
労働災害防止に取り組む意義
日本は少子高齢により人口減少、働き手が急減。介護業界においては介護を必要とする人が今後益々増加することを考えればどのように人材確保をしていくかは大きな経営課題となっています。労働災害が発生すれば職員が休業し、その分を他の職員がカバーするための過重労働となり、その人が疲れて離職してしまうことも起こりえます。そうすると人手不足に拍車がかかり、最終的には事業継続に支障がでてしまいます。
働く人が高齢化していく中で、離職防止として入浴支援機器として入浴リフトを導入することや移乗介助機器を導入することで、長く安全に働ける環境をつくることはこれからの経営では必須事項といえます。
この記事の執筆者
佐藤 慎也
介護経営コンサルタント
◆プロフィール
組織の仕組みづくりや人材教育などを得意分野とし、介護保険法はもちろんサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなどの制度に精通。
介護経営コンサルタントとして、今までに50法人以上のコンサルティング実績を持ち、自らも介護事業の運営に携わっていたため、経営者からスタッフまで、それぞれの立場にあった指導・提案をすることで圧倒的な支持を得ている。
介護業界の動向を解説したメルマガの発行やコラムの執筆を行いながら、全国各地にて経営者・管理者向けのセミナーやスタッフを対象にした研修まで幅広い分野で年間100本以上の講演を行う。